光のもとでⅠ
 触れなくとも携帯が数値を教えてくれるが、今は翠の手首に直接触れて脈を取りたかった。
 掛け布団を少しめくり、起こさないように翠の手を取る。
 華奢な手首からは健常者のそれよりも弱い拍動が伝う。
 俺は翠の手首からほのかに感じるぬくもりに安堵した。
「少し休ませても起きないようなら一度起こすわ。何が起きたのかはそのときに訊く」
「わかった。それ、俺だけじゃなくて秋兄にも連絡入れて」
「秋斗?」
「ここに来るのに地下道を使った」
「あぁ、なるほどね。バイタルに異常がない限りは気づかないと思ってたけど、司が話したなら別ね。わかった。こっちから連絡入れるわ」
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