光のもとでⅠ
 俺は何も考えずに手を差し出した。
 翠はその手を見ているだけで自分の手を重ねようとはしない。
 あぁ、またか……。
「何を悩むのか訊きたいんだけど……」
「ツカサの好きな人が見たら誤解するかもしれない。それは嫌でしょう?」
「あぁ……そんなこと」
「そんなことってっ!?」
「やけにくだらない理由だと思って」
「くだらなくないでしょうっ!?」
「くだらないな。誤解したなら解けばいいだけだ。だいたいにして、今現在、根本的なところを誤解されているからなんの問題もない。本当にあり得ない誤解をするバカなんだ」
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