光のもとでⅠ
 歩いている途中、俺は時々後ろに引っ張られる。
 振り返れば翠が足を止めてランタンをフルスキャン中。
 俺は後ろに引っ張られるたびに翠の手を少し引っ張って歩いた。
 三回に一度は止まるようにしていたが、これ以上付き合っていたらいつまでたっても校庭にはたどり着けそうにない。
 俺は別にそれでも良かったけど……。
 翠と手をつないで歩く時間がとても大切なものに思えたから。
 灯火は家の明かりを彷彿とさせ、あたたかな雰囲気を作りだす。
 そんな中、言葉もなく歩いているというのに、居心地が悪いとは思わないのが不思議でならなかった。
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