光のもとでⅠ
 翠は翠で、あれこれ災いを零す口に手を当てて、「どうしよう」って顔をしていた。
 その様が、妙に間抜けすぎた。
「どうしよう」って顔をしながらじっと俺を見るのはやめてほしい。
「……見られすぎると減る」
 たぶん間違いなく、神経あたりが磨り減っていく気がする。
 そんな俺を労わってくれたのか、御園生さんにもっともらしいことを告げられた。
「司、早くシャワー浴びないと風邪ひくぞ」
「そうします。ここにいると、自分がどんどん減りそうなので」
 最近気づいたこと。
 御園生さんは翠だけではなく、周りにいる誰にでも気を遣う人だ。ただ、翠に対しては過剰なだけ。

 姉さんの家に入ると、濡れたかばんは玄関に放置したままバスルームへ直行した。
 熱めのシャワーを浴びつつ思う。
 翠は俺の容姿にしか興味がないのだろうか。それはつまり、中身は秋兄が好きっていうこと? 俺の中身は……?
 考えるのは翠のことばかり。
 翠にとって俺はどんな存在なのだろう。
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