光のもとでⅠ
 少し時間を置いても翠は泣き止まなかった。
「……そんなに好きな相手?」
 翠はコクリと小さく頷いた。
「翠なら告白すれば一発OKな気がするけど……」
「意味わからない……。それを言うならツカサが、でしょう?」
「俺のは相手が悪い……。本当に、嫌になるほどうまくいかない」
 本当は相手が悪いのか自分が悪いのかもわかりかねる。
 恋愛経験値や恋愛偏差値なんて言葉、俺には無縁だと思っていた。
「経験値ゼロ」というものに、ここまで影響を受けるとは思ってもみなかった。
 何をするにも手探りで、何を探っているのかすらわからなくなることがある。
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