光のもとでⅠ
「その時点で違うって言ってるようなものだと思うけど?」
 なんか、さっきも同じような会話をした気がする……。
「え? あ、わ……違うっ。違うけど違わなくないのっ」
「それ、日本語として成立してないから。あと、秘密にしておきたいならもう少し声のトーンを落としたほうがいいと思う」
 そうは言ったが、周りに人間がいるわけではない。
 十分な間隔がある中でそれぞれのペアが踊っている。
 チークタイムはほとんど正真正銘の恋人同士のため、フォークダンスやワルツのときのような混雑は見られない。
 長い一曲が終わり翠を観覧席へと誘導する。
「翠の好きなやつってどんな人間?」
 今を逃がしたら訊けなくなりそうで、訊きたいことは全部聞いてしまおうと思ったのがすべての始まりだと思う。
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