光のもとでⅠ
「翠の好きなやつがどんな人間なのか知りたい」
「えっ!? 誰かなんて教えないよっ!?」
 翠の耳は大丈夫だろうか……。
 もしくは耳に聞こえたものは正常でも、それらが脳に伝わるときに奇妙な変換がなされるとか?
「……名前を知りたいとは言ってない」
「……ツカサも同じことを教えてくれるなら言う」
 意外な切り返し……。
 でも、こんなのはよくある交換条件ともいえる。
「とりあえず、鈍い。たぶん、あれの上を行く人間はいないだろうな。いたとしても、一切関わりたくない。それから、真っ直ぐ。相手がなんだろうとかまわないっていうか、自分の中にしっかりとした基準を持った人間。あとは……今まで会ったことがないくらい感受性が豊かな人間」
 きっと、俺が自分の持ち得る情報を話したところで翠は「自分」という答えにはたどり着かない。
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