光のもとでⅠ
 とりあえず、単なる先輩からは脱し、頼れる人には昇格したようだが友達というわけでもなく……。
 少しずつ警戒が緩んで近づいてきてくれているのはわかる。でも、半径一メートル以内に入るまでは自分から動くつもりはない。
 そう思っているうちに翠は秋兄と付き合い始めた。
 秋兄が強引に話を進めたわけではないのだろう。事実、翠は秋兄のことを好きだと見てわかるわけで……。ただ、現在戸惑っているのも確か。
 さっきだって秋兄に抱えられていてもおかしくないものを御園生さんが当然の顔をして抱えていた。
 違和感を覚えずにはいられない。加えて昼間の不可思議なバイタル――。
 いつもよりも血圧が高く、頻脈だった。それが一瞬にして通常値といえる数値に落ち着いた。あれは秋兄が何かしら仕掛けたと見て間違いないはずだけど、その割りに秋兄の機嫌は悪かった。
 昼に何があったんだか……。
 訊けば教えてもらえるだろうか。
 ……教えてもらえるかは別として、訊くだけ訊いてもいいかもしれない。
 それで、どのくらい頼りにされているのかがわかるかもしれない。
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