光のもとでⅠ
 服に着替え髪を乾かすと、かばんの中身を確認する。
 雨に濡れたのはかばんだけで、中身は無事だったらしい。
 制服と一緒に出しておけば、靴やかばんも乾かしてもらえるため、玄関に一式揃えて出しておいた。
 九階に下り、ゲストルームのドアを開くと、秋兄が廊下に座り込んでいた。
 落下したであろう携帯が床にある。
 ……この人何してるんだか。
 翠の使っている部屋のドアは閉じており、中からは複数人の声が聞こえてくる。即ち、中にいるのは翠と御園生さんと若槻さん。秋兄は締め出しを食らっているというところだろうか。
 秋兄に視線を戻すと、ひどく嫌そうな顔をされた。
 秋兄は携帯の電源を入れようとしているのか、同じ動作を繰り返している。そんな秋兄を横目に軽くノックしてからドアを開けると、翠をかばうように抱き寄せている御園生さんと若槻さんが側に付き添っていた。状況と翠の充血した目から、泣いていたことがうかがえる。
「これ、なんの集会?」
 訊くと、「兄妹会議?」と三人は声を揃える。
 三人そろって首を傾げるな、と言いたい。
「あぁ、そう。じゃ、俺は邪魔ね」
 言ってすぐにドアを閉めた。
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