光のもとでⅠ
 それは周りの状況が思ったよりも厳しいということか、それとも翠の体調か?
 急ぎ携帯に意識を戻すもそれらしい数値は並ばない。
 何かあれば俺よりも先に秋兄か姉さんが気づいて行動に出るだろう。
 それに、俺が地下道を使うといった時点でインカム通信のすべてを秋兄は傍受しているはず……。
『翠葉ちゃん、どうかした? 大丈夫っ!?』
 茜先輩の心配そうな声のあと、簾条の冷静な声が響く。
『翠葉、無理なら動かないで。一度動くと誘導の都合上立ち止まれなくなるの』
『翠葉ちゃん、大丈夫。六時半まで逃げ切れば司と翠葉ちゃんの勝ちだから。あと十分』
 朝陽の声だった。
 あと十分……。
< 6,897 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop