光のもとでⅠ
 モニタリングしている人間は誰もが翠の状態を知っている。
 それでも翠自身に何も言わない。
 翠の近くにいる俺にすらなんの連絡も入らない。
 つまり、黙認とか容認。
 明日から二日ある休みを代償に許された自由――。
 それを俺が奪う権利はない。
 騒がしい声はしだいに遠ざかっていく。
 一気に静かになった図書室は、空調の音だけが無機質に響いていた。
 俺は、その無機質さを増すために照明を落とす。
 うるさい音もなければ煩わしい光もない。
 冷たさを感じる月明かりとこの静寂に、いつもの自分を取り戻せそうな気がした。
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