光のもとでⅠ
「わざわざ席を空けてくれてありがとう」
 男は血相を変えてボックスから出ていった。
 俺が腰を下ろすなり簾条に文句を言われる。
 今度は視線だけではないため無視もできない。
「あんた来るの遅いのよ」
「俺がいなくても簾条がいれば問題ないだろ?」
「私は言葉にして威嚇する必要があるけど、あんたなら姿形、名前だけで十分でしょ? そのほうが手間が省けて楽よ」
 どんな理由だと視線を投げると、そんな理由よ、とでも言うような視線が返された。
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