光のもとでⅠ
 俺は条件反射で翠の手首を掴み席へ引き戻す。
 翠がこちらを向いたとき、「絶対零度」と言われる笑みを向けた。
 翠は気まずそうな顔をして、次は簾条の方を向く。
 俺と簾条を交互に見ることから、簾条も同じ行動に出たのだろうと察した。
 翠は少し困った顔をして、
「お水買ってくるっ」
 理由を告げ、今度はゆっくりと席を立ちボックスを出ていった。
 海斗たちの歌を聴くのが耐えられなかった……?
 それとも、ふたりを目の当たりにするのが耐えられなかった?
 ……どちらにしろ、翠をひとりにするのは得策じゃない。
 俺は席を立ちボックスを出た。
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