光のもとでⅠ
 携帯はすぐに切れ、一分と経たないうちに簾条がボックスから出てきた。
 俺を見つけるなり、食って掛かる勢いで歩いてくる。
「あんたねっ!? あんなうるさい場所で携帯が使えるとでも思っているわけっ!?」
「まさか……そんなめでたい脳は持ち合わせていない」
「じゃぁ、最初からメールにするなりなんなりしなさいよっ」
「メールを打つのは面倒だろ? それに携帯がつながればこうやって怒って出てくると思った」
「……あんたのそのご立派な脳みそには『呼びに行く』っていう選択肢はないわけ?」
「ないな。誰があんな煩い場所に戻るか」
「はぁ……あんたに常識を求めた私がバカだったわ。それで? 翠葉は?」
 簾条はすぐに翠の姿を探し始める。
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