光のもとでⅠ
「先輩はどうしてそんなふうに想えるんですかっ!?」
 ……ちょっと待て。何がどうしたら今の話の流れで俺に話を振る!?
 栞さんは笑いを堪えているし、御園生さんは「すまん」といった顔をこちらに向ける。
 仕方なく腹を括って翠に向き合う。
「相手がそういう人間だから仕方ない」
 それ以外に答えようがない。なのに翠は質問の手を緩めない。
「……それはすごく我慢が必要なことですか?」
 我慢、か……。
「……人によると思う。俺は自分に我慢を強いているつもりはないけど、周りの人間には我慢しているように見えるらしいから」
 最後の一言は栞さんと御園生さんに向けて放ったもの。
 俺はかわいそうでもなんでもない。まだ諦めたわけじゃないし、チャンスがまったくないと思っているわけでもない。
 とりあえず、今はがんじがらめになってる翠をどうにかしてやりたい。
 そんなに焦るな。翠が焦る必要はない――。
 ベッドに近寄り彼女の目を見据える。
「翠は翠のペースでいいと思う。どうしてそこで人に合わせる必要がある? ……それで許容量を超えてたら翠がもたない」
 翠が秋兄のペースに合わせること事体が無理だし、そんなところで無理をする必要はないと思う。
 悩むな――。
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