光のもとでⅠ
 俺の気持ちを知っても、そのあたりは関連付けられないのだろうか。
「とりあえず、選択肢はふたつ。御園生さんたちに連絡を入れて迎えに来てもらうか、俺と三百メートルの坂道を上るか」
 翠は即答で「歩く」と答えた。
 声の強さに意地になってないか、と若干の不安を抱きつつ、俺は翠の意思を汲んだ。

 翠の歩調に合わせてゆっくりと歩きながら思う。
 本当は「意思を汲んだ」わけではなく、俺が一緒にいたいだけなのかもしれない、と。
 気持ちを伝えるだけ伝えて放置したあと、翠と話をする時間はなかった。
 今、ようやく話ができる状況になった。
< 6,921 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop