光のもとでⅠ
「三十七度六分で頭が朦朧としているとか言わないよな? 言うなら、今すぐ御園生さんに電話して迎えに来てもらうけど?」
 気分的に責めに転じた俺の言葉は嫌みが混じり始める。
「言わないっ。言わないけどっ――ただ、夢か現実かの区別がつかなかっただけ……。本当に、夢、じゃない?」
「……夢だと思っているなら再現するけど?」
 翠はばっ、と下を向いた。
 全力で拒否された気分……。
「……嘘。キスは悪かったと思ってる。……でも、口にした言葉は嘘じゃないから」
 あのキスを正当化できるような材料は何ひとつない。
 合意じゃなかったのは同じ。
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