光のもとでⅠ
 だめだ……。
 もっと普通にできないと。
 もっと「普通」に――。
 でないと、記憶が戻ったことを知られてしまう。

 誰にも声をかけられないように、早足で校舎を出て校門へと歩き始めた。
 逃げたらいけないのはわかってる。
 でも、まだ向き合うのには勇気が足りない。
 だから、私はとりあえず学生の本分を全うするための予定を立てる。
 授業が終わってからマンションに真っ直ぐ帰ってがんばったとしても、休んだ分の遅れを取り戻すのに三日はかかるだろう。
 それに、明日の水曜日と金曜日は病院がある。
 私の予定が空くのは金曜日以降。
 だとしたら、ホテルへ行けるのは土曜日以降になる。
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