光のもとでⅠ
 記憶をなくしたあとの唯兄を思い出しても、秋斗さんとの関係は変わらないように思える。
 それは蒼兄も同じ。
 入院中もパレスへ行ったときも、ふたりは秋斗さんと普通に接していてとても楽しそうだった。
 けど、ツカサはよくわからない。
 一緒にいるところを見かけなくなったのは紅葉祭の準備で忙しくなったから?
 記憶がなくなった私に、秋斗さんと会わないかと勧めてくれたのはツカサだけだった。
 秋斗さんを病院へ連れてきてくれたのはツカサだった。
 でも――ふたりの会話はほとんどなかったようにも思える。
 秋斗さんは自分を信じてくれることが嬉しいと私に言った。
 今の自分を信じてくれる人は少ないから、と。
 その言葉を思い出すと、秋斗さんの切ない表情までもが思い出されて胸が締め付けられる。
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