光のもとでⅠ
 あのとき、秋斗さんはあんな顔をする必要はなかった。
 悪いのは全部私で、秋斗さんが人の信用をなくす必要なんてどこにもなかった。
 私が髪の毛さえ切らなければ秋斗さんが怒ることもなかったし、怒ることがなければ十階へ連れて行かれることもなかった。
 一度失った信用を取り戻すのにはどのくらいの時間が必要なのだろう。
 それは、どのくらい大変なことなのだろう。
 私は秋斗さんの置かれた状況も知らずに「記憶がない」ことを笠に着て、治療に専念すべく「夏」という時間を過ごしてしまった。
 秋斗さん、ごめんなさい……。
 秋斗さんにとってはとてもつらい夏でしたよね……。
 なのに、どうして――。
< 7,012 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop