光のもとでⅠ
 もう、自分が何をどう考えているのかすらわからない。
 これからどうしたらいいのかだってわからない。
 ――違う。
 本当は「考えていない」からわからないの。
 わかろうとする努力をしていないからわからないの。
 私は今、逃げているだけ――。
「リィ、髪を切るなら美容院。何? 今度は髪を切るシーンでも思い出した?」
「っ……!?」
 唯兄が力なく座り込み、手に持っていたハサミをテーブルに置くと、カチャ、と乾いた音が部屋に響いた。
 広くも狭くもない六畳の部屋には人が三人もいるのに無音の空間になっている。
 私が口を開けば、ホールにいるかのように声が響いた。
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