光のもとでⅠ
「仕事、始まるから、かな……」
 そんなの嘘。
 だって、私は焦ってなんかいない。
「記憶」はもう戻っているのだから、焦る必要なんてない。
 お母さんに何か言わなくちゃと思うのに、どんな言葉を口にしたら安心させられるのかがわからない。
 その場しのぎでもいいから、何か言わなくちゃと思うのに……。
「……よし、じゃぁ、俺がリィの話を聞きましょう? ちょうど仕事の話もあったしね。ってことで、碧さん。お茶を淹れてもらっていいですか?」
 唯兄がお母さんを振り返ると、金縛りが解けたかのようにお母さんが動く。
「えぇ……ハーブティーでいい? 翠葉のそのカップも預かるわ」
 テーブルに置いてあった飲みかけのカップを手にとると、お母さんは部屋から出ていった。
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