光のもとでⅠ
 お茶はすでに注がれていたのだ。
「今日二回目のどうして、って顔」
 秋斗さんがクスクスと笑う。
「翠葉ちゃんはずいぶんと時間をかけてテラスを歩いてきたからね」
「っ……!?」
「……ここに来るのはそんなに来づらかった?」
 テラスを歩いている途中、何度も足が止まった。
 そのたびに手提げ袋を見つめため息をついた。
 それをすべて見られていたうえでのストレートな質問に言葉が詰まる。
 来づらかったとは答えにくい。
 でも、気の利いた言葉やほかの言葉が思い浮かばない。
 わかることといえば、「そんなことはないです」と否定したところで真実味はないだろうということくらい。
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