光のもとでⅠ
それを私の手にそっと握らせ、
「必要なら使って?」
「私っ、泣いてなんて――」
「うん。まだ涙は零れてないけど、今にも零れそうだよ」
「っ……」
「それに、これがあればまた翠葉ちゃんに会う口実ができるでしょ?」
私は逃げるように車を降り、お礼を言うことも秋斗さんを見送ることもせずに院内へ入った。
受付を済ませると、唯兄に言われた手順で九階へ上がる。
九階に着くと、真っ直ぐに伸びる廊下を走った。
「走るな」と怒られるかもしれないけれど、ほんの三十メートルほどだから許してほしい。
「必要なら使って?」
「私っ、泣いてなんて――」
「うん。まだ涙は零れてないけど、今にも零れそうだよ」
「っ……」
「それに、これがあればまた翠葉ちゃんに会う口実ができるでしょ?」
私は逃げるように車を降り、お礼を言うことも秋斗さんを見送ることもせずに院内へ入った。
受付を済ませると、唯兄に言われた手順で九階へ上がる。
九階に着くと、真っ直ぐに伸びる廊下を走った。
「走るな」と怒られるかもしれないけれど、ほんの三十メートルほどだから許してほしい。