光のもとでⅠ
「つまりはそういうこった」
 先生はそれ以上は何も言わずに診察台がある病室へと移動し治療を始めた。
 治療には一時間ちょっとかかったけれど、その間、先生は治療に関すること以外は口にしなかった。
 けれども、帰る間際に言われる。
「俺は一度訊いたからな? 訊いたけど言わなかったのはスイハだ」
 私はその言葉を噛みしめる。
 先生は、暗に「二度目はない」と言っているのだ。
 先生は私を甘やかすことはしない。
 受け止めて向き合ってはくれるけど、甘やかすことはしない。
 そういう人――。
 私の周りにいる人だとツカサと同じくらいに厳しい人だと思う。
 今の私には、その厳しさのほうが都合が良かった。
< 7,050 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop