光のもとでⅠ
 優しくされると困る。甘やかされると困る。
 今、優しい言葉をかけられると泣きたくなるから、だからだめ――。

 迎えに来てくれたお母さんにも何かあったかと訊かれたけれど、
「久しぶりの学校に疲れただけ」
 嘘をつくことを戸惑わなくなった自分に気づく。
 そんな自分を嫌だとは思うのに、結局は記憶が戻ったことを知られたくないという気持ちを優先させると「嘘」が必要になる。
 そんな過ち、すぐに気づけそうなものなのに、このときの私は全く気づけなかった。
 秋斗さんのことを考えている振りをして、本当は自分のことしか考えていなかったのだと思う。
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