光のもとでⅠ
 唯兄は鋭い。
 秋斗さんは確かにそう言っていた。
「でも……来客中なら仕方ないよね?」
 私はそう言って玄関を出た。

 ポーチを出たところにあるエレベーターが目に入ったけれど、私はエレベーターを使わず階段で十階へ上がる。
 秋斗さんのおうちはゲストルームと正反対の場所に位置するため、十階の通路を端から端まで歩いた。
 音がしないようにそっとポーチを開け、薄い紙袋をドアポストに挟む。
 ポストに落としたときに立つ音すら恐怖で、私は「挟む」に留めた。
 来たとき同様、音を立てないように最新の注意を払ってポーチを閉じると、自然と手が胸に伸びため息が漏れた。
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