光のもとでⅠ
 なんでツカサがこっちに帰ってきているのかとか、そんなことにまで頭は回らない。
 ただ、すぐ逃げたかった。
 どんな理由をつけてでもいいから、逃げてしまいたかった。
「翠っ」
 名前を呼ばれて立ち止まる。
 でも、振り向くことはできない。
「俺を避ける理由は何?」
 直球な質問はとてもツカサらしい。
「……避けてない。ただ、やらなくちゃいけないことがあるから」
「それって電話? 勉強?」
「どっちも……」
 それだけ答え、ツカサが乗ってきたエレベーターに乗り込んだ。
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