光のもとでⅠ
 ゲストルームに帰ると、唯兄とお母さん、それから栞さんに出迎えられる。
「おかえりなさい」という言葉に「ただいま」と返す。
 たぶん、何を気負うことなく普通に言えたと思う。
 靴を脱いで室内ブーツを履いたとき、玄関のドアが開き蒼兄が入ってきた。
「翠葉は手洗いうがいな?」
「うん」
 かばんだけ自室の入り口に置いて洗面所に入ると、広いとはいえないスペースに蒼兄が並ぶ。
「翠葉が着替えてる間に話しておくよ」
 鏡越しにそう言うと、私の頭を軽くポンポンと二回叩いて出ていった。
 頼もしい背中に向かって呟く。
「ありがとう」と。
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