光のもとでⅠ
 私は車での蒼兄とのやり取りを思い出しながらルームウェアに着替え、仕上げに小宮さんにいただいたシュシュで髪をひとつにまとめた。
 蒼兄が話してくれると言ってくれたけれど、やっぱり自分からきちんと話そう。
 そのほうが心配の度合いが減るかもしれないから。
 蒼兄の表情が「心配」から「諦め」に転じたのは、たぶん私が話したからだ。
 それなら、お母さんたちも人伝に聞かされるよりも、私が話したほうが心配は心配でも「諦め」も混じるかもしれない。
 それに、そのほうがより逃げ道がなくなっていい――。
 ドレッサーの鏡に映る自分の顔を両手でパシっと叩く。
「翠葉、覚悟しよう。逃げ道は――全部なくすよ」
< 7,117 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop