光のもとでⅠ
 それは蒼兄のものより力強く、また、手の平もごつごつとしている。
「いつの世も、女の子が歩く道は険しいものだな。こんな私にも君のような年頃があったわけだ」
 と、くつくつと笑う。
「実はだね、相手が秋斗くんだという情報は得ているんだ」
 言われて顔が熱くなる。
「あの男は厄介だ。しかし、あの男に詰め寄られても操を守り抜いている翠葉くんはすごいと思うのだよ。あんな色男に詰め寄られたらなびかない女のほうが少ないというもの」
 何やらすごいことを言われている気はするのだけれど、普段聞きなれていない言葉遣いに新鮮さを覚えてしまった私は、次はどんな言葉が出てくるのだろうか、とそちらのほうが気になってしまう。
「人は自分の時間を生きているのだ。それは赤子のときから老いるときまで変わりはしない。だから、翠葉くんは翠葉くんの時間を生きれば良いのだよ。男になど流される必要はどこにもない」
 その言葉に尋ねたいことが思い浮かぶ。
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