光のもとでⅠ
「今ね、特急電車に乗ってるの。生まれて初めて……」
『木田さんが一緒って唯から聞いた』
「うん、そうなの」
 その木田さんは、ワゴンを押している人に何かを尋ねているところだった。
『明日、帰りはどうするんだ?』
「……まだ、何も決めてなくて……」
『迎えに行こうか?』
「……ううん、自分で行って、自分で帰ってきたい」
 わがままかもしれない。
 でも――。
「自分で戻らないとだめな気がするの」
 ものすごく抽象的な言い方だけど、蒼兄ならわかってくれる気がした。
 自分でそこから逃げたのなら、自分で戻らないとだめ。
 それだけはわかっていた。
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