光のもとでⅠ
 どうしてほかの人を格好いいと言ってはいけないのか。どうして秋斗さんが面白くないと思うのか。
 自分だったら、と考えてもやっぱりわからなかった。
 エレベーターホールで秋斗さんの腕から落ちそうになったこと。それはとてもいけないことをしたと思っている。実際に、若槻さんが受け止めてくれなければコンクリートの上に落ちていた。
 でも、あのときは蒼兄の顔を見たら安心してしまったのだ。手を伸ばさずにはいられなかった。
 それはどうしてだったのだろう……。
 ドキドキするのは、やっぱり苦手かも……。
 自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。
 それが恋の醍醐味と言われても、疲れるし、急に恐怖のドキドキにすり替わって自分が自分の気持ちについていかれなくなる。
 恋って、こういうものなのかな。
「妙にぼーっとしてると思ったら、熱があったんだな?」
 携帯を見ながら蒼兄に言われ、
「姉さんなら、このくらいの発熱に解熱剤は飲ませないと思う」
 と、司先輩に言われた。
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