光のもとでⅠ
「この駅は八時を過ぎる頃にはタクシーが来なくなります。バスは九時台まであるのですが、何分旅行客を相手とする地域なので、需要がある時間帯しか賑わいません」
「……土地によって色々違うんですね」
「そうですね。藤倉駅ではまず考えられませんね」
 話しているうちに車に着く。
「ここからパレスまでは小一時間ほどです」
 木田さんに後部座席のドアを開けられ、私はコートを脱いでから車に乗った。
 私が乗ったのを確認すると、木田さんは細心の注意を払ってドアを閉め、自分は助手席へと乗り込んだ。
 パッと見ただけだから車メーカーも何もわからなかったけど、形状から言うならセダン。
 けれど、車内は後部座席だというのにとてもゆったりとした空間で、車が走り出しても振動をあまり感じなかった。
 気づいたときには私は寝ていて、パレスに着いてから木田さんに起こされた。
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