光のもとでⅠ
「いつも朝食はお雑炊とうかがっておりましたのでそのようにいたしましたが、何か足りないものはございませんか?」
 足りないものは、と訊かれたけれど、テーブルの上にはお雑炊のほかにお浸しや卵焼き。
 食べやすい大きさにカットされた数種の果物も並べられている。
 けれど、分量に圧倒されることはない。
 私が食べきれるであろう分量しか器には盛り付けられていない。
「木田さん……何から何まで、本当にありがとうございます」
「いえ、当然のことをしているまでです」
 テーブルセッティングが済めばそのあとは給仕することもない。
 けれども、木田さんは私が食べ終わるまで同じ空間にいてくれた。
「あの……」
「はい」
 木田さんは両手を軽く組み、にこやかな表情で答える。
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