光のもとでⅠ
 人の手を借りずに歩くのは難しいかもしれない。
 そして、その「手」を木田さんに求めるのはなんだか申し訳ない気もした。
「木田さんは大丈夫ですか……?」
「私は慣れておりますのでひとりで歩く分には問題ございません」
 小道に入って少しすると、木の根がゴツゴツする場所に突入した。
 すぐに御崎さんが手を差し伸べてくれたけど、その手を取るのには勇気がいった。
 家族や友達、ツカサや秋斗さんの手を取るのとは違う。
「お嬢様、ご安心ください。御崎はナビゲートです」
 木田さんの言葉に唾をゴクリと飲む。
 別に御崎さんが怖いわけじゃない。
 嫌という感情が持てるほど何かを知っているわけでもない。
 記憶がなくても異性は苦手だった。
 記憶を思い出してからは苦手意識が倍増してしまった気がする。
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