光のもとでⅠ
「お嬢様」
 不思議なことに、聞き慣れない声は下から聞こえてきた。
 御崎さんが目の前に跪いていたのだ。
「洋服が汚れちゃいますっ」
 私の言葉に御崎さんはクスクスと笑う。
「替えはございますのでお気になさらないでください」
「でも……」
「お嬢様、森の中を歩くときだけお手をお預けください。私のことは人と思わず、手すりくらいにお思いください」
 まるで木田さんみたいだった。
 声も表情も柔らかくて、手を差し出す仕草まで似ている。
 私は最初に手を差し伸べられてから五分ほどして、ようやく御崎さんの手を取ることができた。
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