光のもとでⅠ
 森の中だというのにラグの周り三方はストーブに囲まれているのだから、知らない人が見たらとても奇妙な光景だろう。
 けれど、これだけの暖房器具をもってしても外は寒かった。
 手や足先がかじかんでいるのがわかる。
 息を吐けば当たり前のように真っ白な上気が立ち上る。
 自分の息を目で追うと、厚い雲に覆われた空が目に入った。
「昨日の夜は星が見えたのに……」
 人はよく、気持ちを空模様にたとえる。
 私もそう。
 でも、今まであまり深く考えていたわけではなかった。
 心が空模様のように変わりやすいものだとは思っていなかった。
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