光のもとでⅠ
「――し、もし?」
 え……?
 ここには誰もいないはずだけど、今、声をかけられた気がした。
 膝を抱え込み丸まった状態で頭だけを上げると、和服姿のおじいさんがいた。
「こんなところで寝ると凍死するぞえ?」
「っ……ろ、げんさん」
「久しぶりじゃのう?」
 目の前に立つおじいさんは、大好きな陶芸作家の朗元さんだった。
「どうして……」
「今日、ここのランチを予約しておっての、ホテルに着いたらお嬢さんが森へ行くのが見えたんじゃ」
 朗元さんは袷着物に羽織を着ていて、首元にはマフラーを巻いている。
 そして、足もとは草履だった。
< 7,273 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop