光のもとでⅠ
「朗元さん、人の気持ちはどうして変わるのでしょう」
 声が震えた。
 寒くて身体が震えているのか、それとも声だけが震えているのかわからない。
 ただ、声が震えていることだけがわかった。
「好きな人が……どうして変わってしまったのかがわからないんです」
 ぽろぽろぽろぽろ。
 涙が零れ、膝掛けになった毛布に落ちてははじかれる。
 私の手を握ってくれていた手は頬に添えられた。
「冷たいのぉ……。ここは寒すぎる。パレスへ戻らんか?」
 まるで諭すように言われた。
「この老いぼれを労わると思って」
 本当はまだここにいたかった。
 この、容赦のない寒さの中で自分を責めていたかった。
 それこそが本当の甘えであることも知らず。
< 7,278 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop