光のもとでⅠ
 涙も止まり視界も良好。
 自分の感覚を少しずつ取り戻していると、御崎さんが数人の従業員と共に現れた。
 たぶん、御崎さん以外の人はラグなどの片付けにやってきたのだろう。
 御崎さんは更地を突っ切り私のもとへ真っ直ぐやってきた。
「御崎さん、あの……お片付け終わるまででかまわないので、もう少しお時間いただいてもいいですか?」
「かしこまりました」
 快諾してくれた御崎さんは片づけを手伝いにいく。
 私はその間、それまでと同じようにゆっくりと歩いて回った。
 ただ歩いているだけなのに、それだけで自然と考えがまとまってくるから不思議だ。
 朗元さん、あのときと今では少しだけ状況が違うみたいです。
 あのときは欲しいものに手を伸ばすのが怖かった。
 得たあと、なくすのが怖かった。
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