光のもとでⅠ
「でも、あのときリィは絶対彼に会いたくなかったよね?」
 私の表情を確認すると、唯兄はにこりと笑った。
「だから俺、追い返しちゃったんだ。けど、明日からはそうはいかない。でしょ?」
 私は嘘つきの笑顔で答える。
「唯兄、大丈夫……。明日からは避けないし、記憶が戻ったことも話すから」
「で、どうするの?」
「……どうもしない。何も、どうもしないよ」
 私はそれ以上話すことができなかった。
 変えない――何も、変えない……。
 一定の距離で、ずっと一緒にいられたらそれでいい。
 唯兄と蒼兄はふたり交互に頭をポンポンと叩き、休むことを勧めてくれた。
 お風呂に入って早く休みな、と。
 私は、「何も訊かない」という優しさに包まれた――。
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