光のもとでⅠ
 翌朝、基礎体温計のアラームで目が覚めた。
 目も開けず、手探りでそれを探しあて体温計を咥える。
「あら、器用ねぇ……」
 その声にびっくりして目を開けると、ベッドサイドに湊先生がいた。
 まじまじと観察中という顔がにやりと笑い、「おはよう」と声をかけられる。
 私は計測中のため、挨拶を返すことができずにいた。
 そのままじっと湊先生を見つめると、くっ、とおかしそうに笑われた。
「はい、うつ伏せになって」
 言われるがまま、体温計を咥えたままうつ伏せになる。と、腰、背中、首筋、と触られて「最悪」の一言。
「キスマークって……最悪すぎるわ」
 言われた瞬間に計測が終わった。
「どうせ秋斗の仕業でしょ? あんの男、何が婚約するまで手は出さない、よ……。全然忍耐力ないんだから……」
 何も言えずにいると、
「翠葉、無理強いされようものならビンタしてやんなさい。もしくはきっぱり振るっ。あんたが無理して秋斗に合わせる必要はこれっぽっちもない。いいっ? 流されるな惑うな放り投げるなっ。自分の身は自分で守りなさい」
「……はい」
 勢いに負かされて返事をした感が否めない。でも、言っていることは美鳥さんと同じ気がした。
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