光のもとでⅠ
32
栞さんはとてもわかりやすく動揺した。
洗っていたカップをシンクに落としたのだ。
「びっくりさせてごめんなさい……」
「う、ううんっ。カップも割れていないし――」
動揺はまだ続いていたけれど、落としたカップをきゅ、と掴むと「大丈夫?」と訊かれた。
本当だ……。
唯兄は正しい。
人は「大丈夫?」と訊くとき、相手の表情をうかがい見るのだ。
「実は、思い出したことに気づいたのはもう少し前なんです。先日、退院してきた日には記憶が戻っていました。でも、なかなか話せなくて……ごめんなさい。でも、もう混乱も動揺もしたあとだから大丈夫です」
洗っていたカップをシンクに落としたのだ。
「びっくりさせてごめんなさい……」
「う、ううんっ。カップも割れていないし――」
動揺はまだ続いていたけれど、落としたカップをきゅ、と掴むと「大丈夫?」と訊かれた。
本当だ……。
唯兄は正しい。
人は「大丈夫?」と訊くとき、相手の表情をうかがい見るのだ。
「実は、思い出したことに気づいたのはもう少し前なんです。先日、退院してきた日には記憶が戻っていました。でも、なかなか話せなくて……ごめんなさい。でも、もう混乱も動揺もしたあとだから大丈夫です」