光のもとでⅠ
「朝食の準備ができたわ。翠葉ちゃん、起きられる?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、顔を洗ってからいらっしゃい」
 そう言うと、栞さんと湊先生は部屋から出ていった。
 その背中を見送りながら、湊先生はいったいどこから情報を仕入れたのだろうか、と不思議に思った。
 栞さん? それとも蒼兄? 司先輩……?
 まさか秋斗さん本人ということはないだろう。
 パジャマからルームウェアに着替えて洗面所へ行くと、蒼兄がいた。
「おはよう。今朝は少しすっきりした顔してるな」
「うん。頭も痛くないし、ひどい吐き気もないの」
「そうか、よかった」
「久しぶりに人間らしく二足歩行ができそう」
 言うと、蒼兄はふっと目を細めて柔らかな笑顔になる。
 やっぱりその笑顔が一番好き……。
 蒼兄は頭を軽くポンと叩くと、入れ替わるようにして洗面所から出ていった。
 鏡に映る自分の顔が、ほんの少し血色があるものに見え、
「気の持ちよう、かな……?」
 そんなふうに思った。
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