光のもとでⅠ
「ん……。本当は、秋斗さんに一番に知らせなくちゃいけなかったよね」
「翠葉……」
「ちゃんと話して謝ってくる」
 蒼兄は車を発進させると腕時計に目をやった。
「放課後っていったら五時前か……抜けられるかな? 俺も一緒に行こうか?」
「え?」
「……すごくつらそうな顔してる」
 私は慌てて手を振って見せた。
「だ、大丈夫っ。ひとりで大丈夫」
 蒼兄は「心配」という文字を顔中に貼り付けている。
「あのね……あの日、ちゃんと謝れなかったから。遅くなっちゃったけど、今日はちゃんと謝りたいの。謝る必要はないって言われたけど、それでも私は謝りたいの」
「謝る必要はない」と言われた今、「謝る」という行為はすでに自己満足でしかない。
 それでも、謝らずにはいられない。
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