光のもとでⅠ
 席の後ろと前の両方から冷気漂う笑顔に挟まれる。
 だめ……無理。散らし寿司じゃなくてスープに決定。
 今すぐ身体をあたためたい。
 かばんからサーモスタンブラーを取り出すと、前後のふたりに突っ込まれる。
「あら、お弁当を食べるんじゃなかったの?」
「弁当は?」
「あ……なんか寒いからスープを飲もうかと思って」
「翠葉にしては珍しいわね? お弁当とスープの両方を食べるだなんて」
「あぁ、そうだな。食べられるのなら両方食べるに越したことはない」
「まさか、それだけなんて言わないわよね?」
「まさか、それだけとは言わないよな?」
 桃華さんとツカサはこんなときだけ仲良しだ。
 声がかぶる以前に言っている内容が同じ……。
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