光のもとでⅠ
「まぁ、このクラスに限って噂を助長する人間がいるとは思ってないけど」
 その顔には「絶対零度」と言われる笑顔を貼り付けていた。
「もちろんっす! そんな噂、誰が流すもんですか」
「末恐ろしくて流せません」
「最新情報より命のほうが大切です」
 クラスメイトの声は右から左へと通過していき、私はひたすらに呆然としていた。
 だって……あの日の歌が自分に向けて歌われていただなんて――。
 今、言われるまで気づきもしなかった。
 紅葉祭初日も二日目も、ツカサのことで頭がいっぱいで……。
 好きと言われても、歌のことまで頭が回らなかった。
 何度となく、朝陽先輩が「好きな人に向けて歌っている」というようなことは教えてくれていたけれど、私はそのたびにショックを受け、嫌になるほど泣いた。
 後日、ツカサの気持ちを聞いてもあの歌が自分に向けて歌われていただなんて思いもしなかった。
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