光のもとでⅠ
 いつもなら一、二年棟から出ると右に歩みを進め、芝生広場や桜香苑を見ながら図書棟へ向かう。
 けれど、今日は左へ――三文棟へ回るルートを歩いていた。
 まだ心の準備が整っていないのだ。
 テラスを歩いている途中、また歩みを止めてしまうかもしれない。
 それを秋斗さんに見られるのが嫌だった。
 だからルートを変えた。
 今、このルートを三文棟へ向かうのは文化部の人たちくらいなものだ。
 この学校では二年までの単位をすべて一年で取得し、二年からの授業は受験を意識した選択性へと切り替わる。
 三年次での授業が最小数になるようにと考えられてのこと。
 三年になると、時間という時間はすべて受験対策に注ぎ込まれるのだ。
 十一月になると三年生は午前授業しかなくなるため、この時間に三年の先輩と会うことはほとんどない。
「自習」という形で学校の先生に教わる生徒は学校に残るし、家庭教師を雇っている人は自宅へ帰る。
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