光のもとでⅠ
「も、もう大丈夫ですっ」
「んー……でも、もう少し。冷たいかもしれないけど、痕に残るよりはいいと思うよ?」
 そう言われ、私は後ろから抱きすくめられたまま流水で手を冷やしていた。
「さ、このくらいで大丈夫かな? ちょっと見せて」
 スツールに座らされ、秋斗さんは私の手を見るために顔を近づける。
「うん、水ぶくれにもなってないし大丈夫そうだね」
 確認をした最後、チュッ、と指先にキスをされた。
「き、きやぁっっっ」
 慌てて手を引っ込めると、秋斗さんはクスクスと笑いながら余裕の笑みを浮かべる。
「過剰反応も嬉しいね」
「なっ、なっ、なっ――」
 自分が何を言いたいのかも定かではない。
 ただ、怖いとかではなく、起きた事象にひたすら驚いていた。
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